お正月に神社やお寺に行くと必ず引きたくなるおみくじ。

おみくじの祖といわれているのは、平安時代に第18代天台座主(てんだいざす)(天台宗で一番エライ人)を務めた、慈恵大師 良源(じえだいし りょうげん)(912~985)という天台宗の僧侶です。
今でも「日本天台宗中興の祖」と崇められていて、元三大師、角大師、豆大師、厄除け大師など、たくさんの尊称で親しまれています。

そんな良源の流れを汲むおみくじが「元三大師みくじ」です。
おみくじの元祖、ともいえるおみくじなんですよ^^

元三大師 良源ってどんな人?

良源が元三大師(がんざんだいし)と呼ばれているのは、1月3日が命日だからです。

下の写真は元三大師 良源をあらわす絵です。

角大師

ですね!
この絵から「角大師」とも呼ばれています。
別に、元三大師が鬼だったというわけではありませんよ^^;

この絵にはこういう伝説があります。

かつて都に疫病が流行った時、元三大師は人々を救おうとして座禅に入りました。
すると、みるみるうちに姿が変わり、鬼の姿に変わっていったのです。

見ていた弟子たちのうちにただ一人、その姿を写し取ることができ、元三大師はその絵を版木でお札を刷るように命じられ、人々に配布しました。

それからこの絵があるところには病魔が恐れてよりつかず、一切の厄難から逃れることができたのです。

元三大師の伝説はほかにも色々伝わっています。

なぜそんなに伝説があるのか?というと、それはずばり、最澄の再来といわれた比叡山のカリスマだからです。

元三大師は荒廃していた比叡山を復興し、それどころか全盛期にまで押し上げた人物なのです。
そこからたくさんの高僧が生まれ、日本の名だたる宗派が誕生していったんですね。
なので比叡山は「日本仏教の母山」ともいわれているんです。

実際の元三大師については、こちらに書きました。

 

元三大師みくじの本場「元三大師堂」

元三大師みくじが世に広く知れ渡るようになったのは江戸時代のこと。
有名にしたのは、徳川家康のブレーンとなっていた天台宗の高僧「慈眼大師 天海」です。

天海は戦国時代から江戸時代初期の僧侶。
元三大師は平安時代の僧侶ですから、時代はかなり違いますね。

ある日、天海の夢枕に元三大師が立ち、

「観音菩薩に祈念して頂いた偈文が、信州戸隠山明神にある。これは人々の困難を救う処方箋である。これで悩める人々を救済せよ。」

と言われました。
それで与えられたのが、おみくじの元祖「元三大師みくじ」です。

現在の一般的なおみくじは、大吉や中吉など、吉凶を占う運試しの要素が強いですが、最初はそういうものではありませんでした。

元三大師が天海に言った言葉からわかるように、人の悩みを解決し、前に進んでもらうために使っていたのです。

つまり、僧侶はお寺に来た相談者の話を聞き、元三大師に助言を求めながら元三大師みくじを引き、出た結果をベースにして悩み事に対する助言を与える、という流れだったのです。

今ではこのようなおみくじの使い方をしているところは見かけませんが、今でも本来の使い方が受け継がれているのが、比叡山の横川エリアにある「元三大師堂」です。

横川 元三大師堂

元三大師みくじを引く手順

元三大師堂は、元三大師が住んでいた場所。
元三大師信仰の総本山です。
「おみくじ発祥の地」として知られています。

そもそも比叡山延暦寺は京の都を守るようにと、平安京の鬼門(北東)に位置する場所に建てられたのですが、元三大師堂は比叡山の中でさらに鬼門にあたります。
鬼門中の鬼門となる場所に、自ら鬼になるほどものすごいパワーを持っている元三大師が守っていらっしゃるというわけですね^^

元三大師堂のおみくじについてですが、堂内にはこんな内容の張り紙が貼られていました。

元三大師堂のおみくじは、自分の進むべき道に迷いができたとき、お大師様にその方向を決定して頂くものです。

決して予言ではありません。
運試しの方には、ご遠慮いただいております。

一番下の赤字にした文が気を付けたいところ。
上で説明した通り、吉凶を占うだけじゃないんですよね^^;

元三大師堂のおみくじは、1回千円。(※電話予約が必要です)
おみくじにしては高いように思えますが、それもそのはず、元三大師みくじは、いわば「カウンセリング」です。

占うだけでも数十分はかかりますので、むしろ安いのかもしれません。

住職によると、

「相談に来て頂いたからにはその方向性を示して前に進んでもらいたいので、こちらも真剣に向き合わなければならない」

とのことでした。

元三大師に使える住職は、比叡山の中でも群を抜いて長い、毎日7時間の読経のお勤めが課せられるのだそうです。
それ以外にもやることはたくさんあるので、欠かさずやるのはなかなかキツいと思います。

それでもやるのは、悩みを抱えて山を登ってくる人たちと向き合う「気構え」を作るためだといいます。
相談する側も、真剣に相談しなければいけませんね^^

元三大師みくじをしてもらうにあたって、注意点が二つあります。

  • 何をお伺いしたいのか、内容をハッキリさせておくこと
  • いただいたアドバイスはきちんと実行すること

です。

相談内容はどんなことでも良いのですが、自分では本当に決めきれない悩みを相談するとよいとのこと。
内容が漠然としていたり曖昧な状態だと、おみくじが引けないこともありますのでご注意ください。

元三大師みくじをひいてもらう流れはこのようになっています。

  1. 電話で予約する
  2. 相談内容を紙に書く
  3. 住職と面談する
  4. 住職が読経をしておみくじをひく
  5. 住職がおみくじの内容を解説

詳細を説明します。

電話で予約する

元三大師みくじをするには、予約が必要です。
ただし、延暦寺のWebサイトには予約のページはありませんので、電話予約となります。

  • 元三大師堂:077-578-3683
  • 受付時間:8:00~16:00頃

となっています。

相談内容を紙に書く

当日、元三大師堂に行って、受付で相談したいことの概要を紙に書きます。
住職に渡したら、次は面談です。

住職と面談する

元三大師にお伺いしたいことの詳細を住職が尋ねてきます。
時間をかけて悩み事の核心を絞り込み、元三大師にどういう風にお伺いするかハッキリさせるためです。

住職が読経をしておみくじをひく

元三大師堂では、自分でおみくじを引きません。
元三大師に直接お伺いをたてることになるので、修行を重ねた僧侶しか引けないのです。
なので住職に代わりに引いてもらうことになります。

おみくじの引き方は、おみくじの棒を引き、出てきた数字でくじが決まるスタイル。
ここは普通のおみくじと同じでした。

住職がおみくじの内容を解説

元三大師みくじ

上のようなおみくじを頂けるのですが、おみくじ自体は普通のおみくじです。

でも、その内容について住職が説明して下さり、仏教的観点からアドバイスを下さります。
アドバイスも、おみくじと古文書をつきあわせて行ってくれます。

キモとなるのは、挿絵の下にある漢文の部分。
これが元三大師みくじの原文で、核心に触れる部分です。

初期の元三大師みくじには、これしかなかったのだそうです。

でもこれではわかりにくいということで、江戸時代中頃から絵がつくようになり、それから一般的な解説文もつくようになっていったたんですね。
でも、書いているままだと一般的な説明で終わってしまうので、住職がこれを相談内容にあわせて解説してくれます。


これでおみくじによるカウンセリングは終わりです。

終わった時点で、解決に向けての方向性は示されているはずなので、あとは勇気をもって行動するだけ。

元三大師みくじは、このような感じで、本気度の高いおみくじなのです。

人生の岐路に立たされていて、どちらにしようか迷っている。
または、決めかねているものがある。
そんな方は、横川で元三大師に相談してみるのもよいかもしれません。

背中を押してもらえているような感じで、覚悟が決まると思いますよ^^

気軽に元三大師みくじを引くには?

上のような重たい感じなおみくじはちょっと・・・
でも元祖のおみくじには興味がある・・・

そんな方もいるかもしれません。

実は、普通のおみくじタイプの元三大師みくじも、元三大師ゆかりのお寺にある場合もあります。
私は大原の三千院で引いたことがあります。

三千院 元三大師みくじ

紙のフォーマットは、漢文と挿絵、そして解説がついた、本場の元三大師みくじと一緒でした。

これなら気軽に引きたい方も引くことが出来ますね^^
あと、京都御所東側にある廬山寺でも普通のおみくじタイプの元三大師みくじがありました。


延暦寺は「比叡山」という山全体が境内になっていてとても広く、東塔(とうどう)西塔(さいとう)横川(よかわ)の三つの地域に分かれています。

中で一番有名な根本中堂は東塔にあって、横川には車で行かないと結構遠いですので、行き方も考えておいた方が良いですね。

比叡山への行き方については、公共交通機関と車との場合にわけて記事にしました。
どちらにも割引情報がありますので、参考にしてみてください。