香川県の琴平町にある金刀比羅宮は、785段もの長い石段で有名です。
その石段の途中に宝物館があります。

こんぴらさんは信仰の歴史が深いですし、江戸時代には、「こんぴら参り」が「お伊勢参り」に次ぐブームを引き起こしました。
身分の高い人から庶民まで信仰していたわけです。

こういう神社だからこそ、優れた文化財が残っていることが期待できます。

こちらがこんぴらさんの宝物館。

こんぴらさんの宝物館

結構立派な宝物館です。
今回訪れた時はこんな特別展が行われていました。

こんぴらさんの宝物館 『こんぴらさんの“おもしろ”』展

何やら妖怪がたくさん描かれていて、面白そう♪
というわけで拝観してみました。

名前通り、印象的でおもしろいものがたくさんありましたよ^^
宝物館で頂いたチラシから一部を紹介します。

奥社「厳魂神社」に伝わる山岳信仰の文化財

こんぴらさんは本殿まで785段の石段を上りますが、さらに上があって、1368段上ったところに奥社「厳魂神社(いずたまじんじゃ)」があります。
本殿まで登るのも大変ですが、奥社まで上るのは本殿までよりキツイです><

なのでかつては山伏による山岳信仰が盛んな場所で、修行の場だったわけです。
「山伏」は天狗に結びつくのが一般的で、ここでも社殿横の崖の上に、天狗の面があります。

金刀比羅宮奥社「厳魂神社」にある天狗面

宝物館に天狗の信仰がうかがえる木造の天狗面がありました。

金刀比羅宮宝物館 天狗面

縦57.5cm、横39.0cm、高さ65.0cmの大きさ。
近くで見ると結構な大きさですので、かつてはこれが崖の上に置かれていたのか、それともそれ相当の大きさに作って奉納したのもしれませんね。

そしてこういうものもありました。

金刀比羅宮宝物館 重要有形民俗文化財の天狗面

箱に入った天狗面で、

  • 天狗面:縦35.5cm、横27.5cm
  • 箱:縦53.7cm、横35.4cm

となっています。
箱に入っているのには理由があって、実はこれを背負って山を登っていたんですね。
その様子が、この天狗面の横に展示されていた「金毘羅詣図」に描かれていました。

天狗面を背負った金毘羅詣図

これ以上アップにしてみても見えにくくなってしまうのですが、松の下にいる白服の人は、この天狗面を背負っているんです。
別名「天狗背負図」とも呼ばれています。

なぜそれを背負うようになったのかは説明されていませんでしたが、それだけ天狗の信仰が盛んだったのでしょう。
これで奥社まで登るのは大変そうですが、ここに現物が残っていて、絵にも描かれているということは、そういう人たちが結構いたということなのでしょうね。

崇徳上皇に仕えた源為朝

本殿から厳魂神社に向かう途中に白峰神社があります。
崇徳上皇を祀る社です。

崇徳上皇とはどういう人物か?というと、平安時代後期に、皇位継承問題や摂関家の内紛で武力衝突にまでつながった保元の乱で敗戦して、讃岐国に配流された人物です。
平将門、菅原道真と並び、日本三大怨霊の一人にも数えられています。

配流後、京に戻る願いもかなわず、讃岐の地で失意と恨みを抱きながら亡くなったのですが、そのあまりの悔しさから天狗になったとも言われているのです。

源為朝は、保元の乱の時に崇徳上皇側に仕えた源氏の武士です。
弓の名手だったそうです。

源為朝図
(為朝図)

下は幕末の浮世絵師「歌川国芳」の作。

讃岐院眷属をして為朝をすくふ図

「讃岐院」というのは崇徳上皇のこと。
眷属は讃岐院に仕えている者のことですね。

この絵は、源為朝が九州から平家討伐に向かう途中、台風で難破したところを描いたもので、「椿説弓張月」という小説の一部分を描いたものです。

船に乗っているのが源為朝。
波にのまれそうでピンチなのですが、そこに眷属の天狗や怪魚、上皇の家来たちを遣わして助けようとしているのです。

上の写真ではわかりにくいですが、船の周りを飛んでいるいくつかの白い影のようなものが天狗です。

私は最初、巨大な魚に襲われそうになっているのを勇敢に戦っているのかと思っていましたが、全然違いますね^^;

こんぴらさんに奉納されたその他おもしろ奉納品

上で紹介した奉納品だけでも十分興味深いのですが、単発でもなかなかおもしろいものが奉納されています。

こちらは今回の特別展のリーフレットに使われている「百鬼夜行絵」。

こんぴらさんの百鬼夜行絵

「百鬼夜行」というのは、夜中に妖怪や鬼の団体が練り歩く様子を描いたものです。
宮司家に伝わるものにこの作品があるのですが、今回展示されているものは昭和9年に模写されたものです。

百鬼夜行の作品をもつ神社仏閣はいくつかありますが、大きく分類すると器物の妖怪である付喪神(つくもがみ)の行列と、動物の妖怪の行列の二系統があるそうです。

こんぴらさんが所有しているこの図は、その両系統を混ぜたものになっています。

そしてインパクトのあるこちらの作品。

こんぴらさんに奉納された人魚のミイラ

「人魚のミイラ」です。
「作品」と言っていいのかどうかわかりませんね^^;
「奉納品」です。

大きさは縦26.0cm 横43.0cm。
じっくり見てみましたが、歯のつき方やあばら骨、背びれなど、かなりのリアル感がありました。
ミイラと言われればミイラですね。

わかっているのは、江戸時代に人魚のミイラとして奉納があった、ということだけなのだそうです。
どこの誰が奉納したのかもわかってないのです。

不思議な奉納品です。

他にも、写真はありませんが江戸時代に讃岐高松藩主だった松平頼重が奉納した「三十六歌仙図」もありました。
徳川将軍家の御用絵師だった狩野探幽、尚信、安信の三兄弟が描いた作品です。

保存状態が良くてきらびやか、なかなか目を見張るものがありました。

本来は、藩主の松平頼重が参詣した時にのみ掲額していたのだそうで、一般の人は見ることがなかったものです。
そして今でも保存状態を保つためか、あまり展示もしてこなかったようです。

それが全作品見られる機会はなかなかないですね^^

『こんぴらさんの“おもしろ”』展は、平成30年4月1日[日]~9月30日[日]まで。(会期中無休)