秋篠寺 本堂

平城京の北西、「秋篠の里」と呼ばれる場所にある秋篠寺。
「あきしの」という言葉の響きにどこか上品さを感じますね^^

秋篠寺は奈良時代最後の天皇、光仁天皇が発願、そしてその子である桓武天皇の勅命により造営されたお寺で、伽藍が完成したのは平安遷都と同じ頃。
つまり、奈良時代最後の官寺です。

また、創建には別の説もあって、この地の所領であった秋篠氏が氏寺として造られたというものもあります。

このように創建には不明点がありますが、今では美しい苔庭や、「東洋のミューズ」と称賛される伎芸天など、魅力的な見どころがあることで有名です。

そして本堂の西に立つ「大元堂」には、秘仏 大元帥明王(だいげんみょうおう)が安置されています。

「大元帥明王」という明王は聞きなれない方も多いと思いますが、その霊力は明王の最高尊「不動明王」に匹敵するとも言われている明王です。

ただ、日本では理由があって、数がありません。
仏像として残っている例は、この秋篠寺が唯一なんです。

そんな大元帥明王ですが、毎年6月6日、年に一度だけ御開帳されます。
私はその日に合わせて秋篠寺を訪れてみました^^

秋篠寺の御開帳!開門時には既に人がたくさん

秋篠寺の開門は9時30分。
私も9時半ジャストに着きました。

毎年大元帥明王の御開帳日は人が多いと聞いていたので、早めに参拝しようと思っていたのですが、既にこの状態!

秋篠寺 御開帳

写真は東門ですが、行列が門から外まで出ています。
もちろん駐車場も満車><
さらに駐車待ちの行列まで発生していました。

御開帳日に拝観に来る方は年々増えているそうです。
私が訪れた平成27年の6月6日は土曜日でしたので、特に多かったのかもしれません。

秋篠寺の駐車場は、境内北側に12台ほど停められる駐車場と、南側に観光バス専用駐車場の2か所があります。
そしてこの日は、観光バス専用駐車場も一般の車に開放していました。

ただ、秋篠寺近辺の道は、対向車とすれ違うのも気を使うほど道が狭いです。
その上、この日は駐車待ちの車も路上に並んでいたので、道が渋滞していました。

交通整理の人も、駐車場の案内どころか、とにかく道を通すことで精いっぱいの様子でした^^;

北側の駐車場は満車だったので、南側の駐車場に行ってみると、案内の人もどうしようもない様子で、
「悪いけど、そこの競輪場の駐車場に停めてもらえるか?」
と言われ、すぐそばにある奈良競輪場に停めることに。

秋篠寺の駐車場ではないですし、提携している様子もないのでちょっと気が引けましたが、競輪場の駐車場は第六駐車場くらいまであって、かなり広い上にガラガラだったので、今回は停めさせていただきました^^;

9時半についたのに、車を停めるだけで30分ほどロス><
秋篠寺の駐車場は小さいので、参拝は公共交通機関を利用した方が良いですね^^;

開門から30分遅れでやっと並ぶことができましたが、車を降りてからも大元堂まで行列が続きました。

秋篠寺 御開帳日

秋篠寺名物の豊かな雑木林と苔庭の前も行列。

秋篠寺 御開帳日

大元堂に入堂できるまで2時間かかりました^^;

帰りはお昼頃になったのですが、その頃には行列が半分に・・・
お昼時の方がねらい目なのかもしれません。

秋篠寺の境内 深い雑木林と美しい苔庭

秋篠寺 雑木林

秋篠寺の普段の姿は、深い雑木林の中にある静かなお寺です。
上の写真のように、市街地の一角にあるとは思えないほど背の高い木々に囲まれています。

行列はこの中で並んでいたのですが、人が多いのにも関わらず、空気が美味しかったです^^
それだけ緑が豊かだということでしょう。
人がいなかったらもっとピリッとした空気が味わえるんでしょうね♪

そして、門から拝観受付にたどり着くまでに、苔庭があります。
前日に雨が降っていたのですが、水分を吸収したからか、苔も美しく輝いていました^^

秋篠寺 苔庭

秋篠寺 苔庭

年に一度の御開帳!大元帥明王を安置する大元堂

大元堂

拝観料を支払って中に入ると、すぐ左側に大元堂があります。
小さなお堂ですが、そこだけ行列になっていました。

中にはもちろん、大元帥明王(だいげんみょうおう)が安置されています。

尊像の場合、読み方は「だいげんすい」ではなく、「だいげん」と読みます。
理由はわかりませんが、真言密教では「帥」を発音しないのだそうです。

軍隊のトップの肩書きに「大元帥」または「元帥」というものがありますが、それもこの大元帥明王から由来されているそうです。
そのせいか、「大元帥」という響きがいかにもラスボスっぽくて強そうですよね^^

実際大元帥明王は、どしんと大木が真ん中を貫いたような重厚感があって、ものすごく強そうでした。
お堂内で写真が販売されていたので、購入しました。こちらです。

大元帥明王

ご覧の通り、見た目もラスボスです^^

像高230センチ、鎌倉時代に作られた尊像なのですが、御開帳の時は、これを触れることができるほどの距離で下から見上げるように拝めるのです!
よく見ると全身に蛇を巻きつけており、炎のように逆立った髪の毛も迫力があります。

どんな武器を持っていても勝てそうにありませんね^^;

鎮護国家のために行う「大元帥御修法」という密教の修法があるのですが、大元帥明王はその修法を行う時の本尊として置かれます。

しかしその大元帥法は本来、怨敵を降伏させることを祈願の目的とするもの。
そのような使い方をされてきた大元帥明王は強力なパワーを持っていたのです。

なので、大元帥法は宮中でのみ修せられ、宮中以外で尊像を造ったり、祀ったりすることは禁じられていたそうです。
クーデターなどを起こされては困りますからね^^;

大元帥法は、入唐八家(唐に渡って密教を学び、日本にもたらした8人の僧侶)の一人、常暁というお坊さんによって日本に伝えられました。

常暁は、国を護るための修法として、唐で学んだ大元帥法の実施を朝廷に奏上します。
その際、秋篠寺は常暁ゆかりのお寺だったので、大元帥法を行う時の必要な備品などを揃えるのは秋篠寺が行うものとなったのです。
だから秋篠寺に尊像が伝わっているのでしょうね。

堂内では、大元帥明王のお守りも販売されていました。

大元帥明王 お守り

観音開きでお御影になっている珍しいタイプのお守りです。
敵なら怖いですが、味方ならなんとも頼もしい限りですね^^

大元帥明王が現れたとされる閼伽井

秋篠寺には、大元帥明王が現れたという閼伽井(あかい)があります。
閼伽井(あかい)というのは、仏に捧げる水を汲む井戸のこと。

その閼伽井が、東門から入って角を曲がったところにある「香水閣」にあります。

秋篠寺 香水閣

入り口には「清浄香水(せいじょうこうすい)」「味如甘露(あじかんろのごとし)」と刻まれた石碑がたっています。

実はこの場所も、大元帥明王の尊像が秋篠寺に伝わっている理由と関係していそうなのです。

常暁は唐に経つ前、秋篠寺で修行をしていました。
閼伽井に水を汲みに行ったところ、水面に荒々しい忿怒のお顔をされた仏が写っていたのです。
常暁は驚いて、その姿を描き写しました。

その後、常暁は唐で大元帥法と出会い、それを学ぶのですが、その時に、秋篠寺の閼伽井で見た仏が大元帥明王だったことを知るのです。

香水閣の入り口の横には、大元帥明王が出現したことを示す石碑が建っています。

秋篠寺 香水閣

このような理由から、大元帥法では香水閣の水が使われるようになります。
明治時代までは、修法以外の用途でも、霊水として宮中に献上されてきたそうです。

大元帥明王が現れたという閼伽井を覗いてみると、そこには本当に大元帥明王が・・・

秋篠寺 閼伽井

現れませんでした^^;
でもとても綺麗な水になっていました♪

香水閣は、日頃は門が閉じられていますが、6月6日の御開帳の時だけ門が開けられます。
そしてお寺のスタッフの方が常時いて、水を汲んでもらうことができます。

秋篠寺 香水閣

私も大きな柄杓で水筒に入れてもらいました♪

石碑に「味、甘露の如し」と書かれていましたが、飲んでみても甘いのかどうかよくわかりませんでした^^:
でもこの水は、言ってみれば超神水みたいなもの。
もしかしたら私は今、とんでもなく強くなっているのかもしれません(≧▽≦)

東洋のミューズと称される、魅惑の伎芸天

秋篠寺 本堂

秋篠寺の本堂(国宝)は、元々講堂が建っていた場所にあります。
平安時代に金堂が火災で焼失し、その後鎌倉時代になって講堂の大修理が行われたのですが、その際に金堂と講堂の機能を併せ持つ「本堂」になりました。
建物としては奈良時代のものを踏襲した素朴な造りになっています。

本堂内には、御本尊の薬師如来を中心に、たくさんの仏像が安置されています。

愛染明王、帝釈天、不動明王、薬師如来、日光・学校菩薩、十二神将、地蔵菩薩・・・と、多くの仏像が横並びされているのですが、やはり一番の注目は、左端にある優美な天女、伎芸天です。
左端なのに一番人が集まっていました^^

秋篠寺は日本で唯一、伎芸天がいらっしゃるお寺として有名なんです。

像高204.5cm、頭部は天平時代の脱活乾漆造り、胴体は鎌倉時代になって寄木造で補作されたものになっています。

写真は撮影禁止なのでありませんが、JR東海のCM動画がありましたので、こちらをご覧ください。

お姿を見たらわかると思うのですが、柔らかな腰のひねりでやや首をかしげ、落ち着いた微笑みを浮かべています。
全体的に女性的な柔らかさがありました。

2メートル近い高さの仏像なのに、全く威圧感はありません。
それどころか、優しさで包まれそうな美仏です^^

どこから見ても美しいのですが、角度を変えて見ると微笑みだけでなく、憂い顔になったり、色々な表情を浮かべるんですよね^^
見に行かれる方はぜひ、遠くや近く、そして色々な角度から見てみてください。
私は左斜め下から眺めた時が一番惹かれました。

そんな風に伎芸天が注目を集める本堂ですが、中心にいらっしゃる薬師如来も忘れてはいけませんよね^^;
実は私は、ここの薬師如来のふっくらとした丸顔も好きなんです^^

伎芸天の方から順番に見て、薬師如来の方にたどり着くと、なんだかムスッとしたようなお顔をされています。
注目を集める伎芸天に嫉妬しているような感じです^^;

でも、真正面あたりの遠目からお顔を見ると、満面の笑みを浮かべているんですよね♪
秋篠寺に行かれたら、ぜひその違いを見比べてみてください。

秋篠寺の御朱印

秋篠寺では、普段は御朱印は用意していないそうです。

でも、6月6日の大元帥明王の御開帳日だけは大元帥明王の御朱印が用意されます。
つまり、秋篠寺の御朱印が貰えるのは今のところ、この1日だけなんです。

御朱印集めをしている方は見逃せない1日ですね^^

こちらがその大元帥明王の御朱印です。

秋篠寺 御朱印

御朱印は拝観受付のところで、拝観料を支払う時に御朱印帳を預けて、帰りに返してもらうシステムになっています。

当日は2時間も並ぶほど人がいっぱいだったので、拝観から帰ってきても御朱印帳を返してもらうのに並ぶというほど追いつかない状態でした^^;
御朱印を書く人もこの日ばかりは大変ですね><


今回は特別な日なので人がいっぱいでしたが、人が少なそうな平日の落ち着いた雰囲気の時も訪れてみたいですね。
そんな感じのお寺でした。

御開帳日のみ御朱印が頂ける秋篠寺ですが、御朱印を頂く場合に、注意点が一つあります。

それは、旅行会社のツアーで行かれる場合は、御朱印は貰えない可能性が高いということ。

御開帳日は朝から長い行列ができますが、ツアーの団体は行列に並ばずに拝観できるメリットがあります。
それは良いのですが、御朱印は拝観料を支払う時に一緒に渡すので、列に並ばないといけないのです。

団体で行動していると、次の予定もあったりしてそれもできないですよね^^;
なのであきらめている方が結構いました。

団体用の御朱印受付などを用意すれば済む話なので、今後、旅行会社とお寺側でどうにか調整すればツアーでも頂けるようになるかもしれませんが、今のところ毎年増える参拝客の人数に圧倒されて、人手不足感があり、後手後手な感じがしました。

大きなお寺ではないので、この日一日のために用意するのは難しいのかもしれません。

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