正倉院展

毎年恒例、奈良国立博物館 正倉院展に行きました。
今年は土曜日に行ったのですが、同じ日に奈良公園で「シェフェスタ2017」という食のイベントがあって、とても賑やかでした^^

おかげで人が分散したのか、お昼の12時半頃で15分待ちの状態。
土曜の割には、比較的見やすく鑑賞することができました。

今年の目玉は、可愛らしい羊が描かれた「羊木臈纈屏風」

今回は北倉10件、中倉25件、南倉20件、聖語蔵3件の、合わせて58件の宝物が出陳、そのうち10件が初出陳となっています。

そんな中、今回のポスターに選ばれた展示品は、羊木臈纈屏風(ひつじきろうけちのびょうぶ)
こちらがそのポスターです。

第69回正倉院展 ポスター

羊木臈纈屏風は、2007年以来となる10年ぶりの出陳です。
2003年には記念切手に採用されています。

技術的には、文様部分を(ろう)で描く「ろうけつ染め」という技法が使われています。
その時に使う臈蜜(ろうみつ)はミツバチの巣から作られるもので、それが綺麗に残っていて初出陳となっていました。

このろうけつ染めで描かれた羊さん。
なんとも可愛らしいくて、見れば見るほど愛着がわきそうです^^

聖武天皇のご遺愛の品だったそうですが、日本人は昔から可愛いものを愛でるのが好きだったのかもしれませんね。

それにしてもこんな巻角の羊は、当時の日本にはいません。
今でも動物園に行っても見れるかどうかわからないくらい珍しいですよね。

実はこれ、ササン朝ペルシャで似たような文様が存在するのです。
壁画や水瓶などに描かれているのですが、ササン朝ペルシャではゾロアスター教が国教とされていて、その神の化身がこの羊なんです。

つまり、シルクロードを介して日本にわたってきて、それを見た当時の日本人がこの屏風を作ったわけですね。

正倉院はシルクロードの終着駅といわれていますが、そのような文化交流があったことがわかる作品です。

ササン朝ペルシャは今の中東あたりに存在した王国なのですが、そんな遠いところの文様が日本に伝わっている、さらにそれが残っているのも奇跡を感じますね^^

美しい緑色に輝く杯「緑瑠璃十二曲長坏」

緑瑠璃十二曲長坏
※画像:リーフレットより

こちらも今回の見どころの一つで緑瑠璃十二曲長坏(みどりるりのじゅうにきょくちょうはい)といいます。
2006年以来となる11年ぶりの出陳です。

その名の通り、緑色の十二のひだがあるガラスの杯です。
器にはウサギや花などが刻まれていて、写真で見るよりも緑の輝きがいっそう綺麗でした。

杯というからにはお酒などを飲むものなのですが、飲みにくそうですよね^^;
なので、神様への献物品とか、そういうものに使っていたのかと思ったのですが、そもそもこの形はササン朝ペルシャにルーツがあるそうです。
そこからヨーロッパや東アジアに伝わったそうで、この杯は中国製のものとなっています。

「ササン朝ペルシャ」って、私は世界史の授業でしか聞いたことがないですが、なかなかの文化度の高さですね。

洗練されたエレガント美「碧地金銀絵箱」

碧地金銀絵箱
※画像:リーフレットより

金銀泥で描かれた花鳥のフタ。
思わず「クッキー缶にしたい!」と思ったのがこの碧地金銀絵箱(へきじきんぎんえのはこ)
2003年以来となる14年ぶりの出陳です。

この箱は仏への献物に用いられたものだそうで、「クッキー缶に・・・」なんてバチあたりでした^^;

中央で向かい合う2羽の水鳥、その周りを花が囲むデザインは今でも通用しますね。
人が美しいと感じるのは法則のようなものがあって、それは昔から変わらないのかもしれない、と思わせるような作品です。


今回は初出陳のものが10件ありましたが、その中に伎楽面の「迦楼羅(かるら)」や「呉公(ごこう)」などがありました。
伎楽面は毎回登場しますが、それでもまだ初出陳があるんですね^^

そしてもう一つの伎楽面「酔胡従(すいこじゅう)」も出ていましたが、こちらも1961年以来となる56年ぶり!
酔胡従の面自体も毎回のように見ていますが、一体いくつ残っているのでしょう?
そんなにきれいに残されたものがどんどんでてくる正倉院展は、いつも驚かされます。

展覧会は平成29年10月28日(土)~11月13日(月)まで。