瀬田の唐橋

琵琶湖の南部、瀬田川にかかる「瀬田の唐橋」。
京の都に近いことから昔から戦略上の重要な地で、幾度も有名な合戦が繰り広げられた橋です。

唐橋のことはこちらにも書きました。⇒勢多唐橋の東西大綱引合戦を見に行きました♪

唐橋にまつわる話は色々ありますが、その中に「俵籐太の百足退治伝説」というものがあります。

俵籐太のムカデ退治

俵籐太(たわらのとうた)は、平安時代中期の関東の武将、藤原秀郷(ふじわらのひでさと)のことです。

弓矢の名手で、あの平将門を討ったことで有名な武将ですね^^

そんな籐太がある日、瀬田の唐橋を渡ろうとした時、橋の上に人間の五倍もある大蛇が横たわっていたのです。
目をギラギラと輝かせていて威嚇しています。

皆が怯えて橋が渡れない中、籐太は、

「こんなところに寝そべるとは、邪魔なやつだ」

と、悠々と大蛇を踏んで渡りました。
すると、後ろから呼び止める者がいます。

「あなたさまにぜひお願いしたいことがございます」

籐太が振り返ると、大蛇の姿はなく、代わりに老翁が立っていました。
実はその老翁が大蛇に化けていたのです。

「私はこの下に住む龍神です。あなたのような勇気のある人を探してわざと大蛇の姿をしておりました。」

「お願いがあります。実は三上山を七巻半まいている大ムカデが湖に来て、私ども龍族の仲間をさらっていくので悩んでおります。どうか退治してもらえませんか?」

「龍族ならムカデなど大したことないであろう。」

「それが、三上山を七巻き半もまいている大ムカデなので、とても手に負えないのです。どうかお願いします。退治して下さい!」

そうやって拝むように嘆願された籐太は、

「そんなに困っているのなら退治してあげよう」

と承諾しました。

「ありがとうございます。ではお礼がしたいので、私どもの屋敷に案内します。」

すると、湖に道ができ、進んでいくと竜宮城が見えてきました。

籐太はそこでごちそうを頂き、酒を浴びるように呑み、音楽と美しい女たちの踊りを楽しみました。
そのような大層なおもてなしを受けているうちに、大ムカデがやってきました。

「よし、では退治してくるとしよう」

籐太は弓と3本の矢を持って立ち上がりました。

1本目、矢が「カチーン!」となって跳ね返ります。
2本目、同じくはじかれます。

「どうしたものか・・・そうだ!あれだ!」

最後の3本目、祈りを込めて矢じりにつばを吐き、眉間を狙って力いっぱい放ちました。

矢は大ムカデの額に命中、食い込んで叫び声をあげながら倒れました。

「ありがとうございます。これはお礼です。どうかお受け取り下さい。」

龍神は米俵、巻絹、釣鐘などの宝物を籐太に贈りました。

頂いた米俵は、不思議なことに減るどころかいつまでも米が出続けるもので、そのことから「俵籐太」と呼ばれるようになりました。

また、釣鐘は美しい音色が響く鐘で、その鐘は三井寺に奉納したそうです。

今ではその鐘は、「天下の三銘鐘」の一つで、近江八景の一つ「三井の晩鐘」としても知られています。

三井の晩鐘 弁慶の弁慶の引摺り鐘

(現在、金堂前にある「三井の晩鐘」は江戸時代に作られた2代目。伝説の鐘は、弁慶が引きずって比叡山に登ったことから「弁慶の引摺り鐘」として安置されています。)

三上山を神体山として崇める社、御上神社

近江富士 三上山

上の山は、俵籐太が退治した大ムカデがいたとされる三上山です。
滋賀県野洲市にあります。

別名「近江富士」とも呼ばれているのですが、草津側から見ると、平野が広がっている中に一つだけ綺麗な山がある感じですね^^

この山の西麓には「御上神社(みかみじんじゃ)」という神社があります。

御上神社 鳥居

古くから三上山を神体山として崇めている神社で、三上山に降り立った天之御影神(あめのみかげのかみ)という天照大神の孫神様を御祭神として祀っています。

かつては朝廷からの崇敬も厚く、霊験あらたかとされていて名神大社や官幣中社という位も預かっていたほどで、今では国宝の本殿、重文の弊殿、楼門等も残っています。

御上神社 楼門

御上神社 本殿

楼門は二階建の三間一戸(柱と柱の間が3つに入口が1つ)、入母屋造の門。下から見上げると組物が立派で、重みがあります^^
そして国宝の本殿は、神社・仏堂・御殿の3様式が合成された造りで「御上造り」と呼ばれています。
重みのある楼門と比べて、こちらは綺麗ですね^^

このような御上神社ですが、実は俵籐太が大ムカデと戦う前に祈願したのだそうです。
そして、御祭神から弓の秘訣を授かって、そのことを思いだして放った三番目の矢が勝利の決め手となりました。

そのアドバイスというのは、矢尻に唾をつけてから眉間を狙うというもの。
大ムカデは人間の唾が嫌いだったんです。

さすが霊験あらたかな御祭神様ですね^^

御上神社の入口前は国道8号線(中山道)が通っているのですが、そこを渡ると三上山の登山道に向かう道があります。

三上山 登山道

山頂には御上神社の奥宮があって、その前には磐座が祀られています。

登山道は、近江富士花公園側から1ルート、御上神社側からは表登山道と裏登山道の2つのルートがあって、御上神社側からは山頂までおよそ40分、勾配が急な登山で、足場が悪いところもあります。
裏山道の方が比較的ゆるやかなので、自信のない方は裏登山道から行くと良いでしょうね。

三上山登山について詳しくはこちらをご覧ください。
野洲市観光物産協会

御上神社の御朱印

御上神社の御朱印です。

御上神社 御朱印

右側には釘抜紋を使った社紋、そして「近江富士 三上山鎮座」という押印が入っています。