頂妙寺

平安神宮前の琵琶湖疏水に沿って東西に延びている仁王門通り沿いにある、日蓮宗 洛東本山 頂妙寺。
「仁王門通り」という名前は、この頂妙寺にある仁王門が由来になっています。

頂妙寺は、風神雷神図屏風で有名な江戸時代初期の画家「俵屋宗達」ゆかりのお寺です。

宗達は、本阿弥光悦とともに「琳派」という流派の源流となっているのですが、2015年はその琳派誕生から400年を記念する年なんです。

なので2015年は京都中で琳派関係のイベントが行われると思うのですが、現在開催中の「第49回 京の冬の旅 非公開文化財特別公開」では、琳派関係の文化財が伝わるお寺のいくつかが公開されています。
頂妙寺もその一つで、しかも京の冬の旅初公開。

というわけで、頂妙寺に行ってみました。

仁王門通の名の由来になった仁王門

記事のトップに載せた写真は、仁王門通りに面している門ですが、あれは仁王門ではなく、山門です。
山門の奥に見えている門が仁王門です。
下の写真が仁王門。

頂妙寺 仁王門

「仁王門」というと、両端に金剛力士像が立っているのが一般的ですが、ここの仁王門はそうではありません。
この門に立っているのは、多聞天(向かって左)と持国天(向かって右)です。
いずれも快慶作(伝)とされている天部像です。

こちらが多聞天。

頂妙寺 多聞天

そして持国天。

頂妙寺 持国天

門の中が暗い上に、金網の隙間からしか見えないので、実際に目にしても見えにくい場合もありますが、太陽の光が上手く入る時に見ればよく見えます。
いずれも力強くて頼もしいです。
さすが快慶ですね^^

そしてこの門にはもう1つ注目したいものがあります。
それが、門の上にかかっている扁額。

頂妙寺 扁額

こちらです。

頂妙寺 扁額

これは、豊臣秀吉から頂いた、布教を許す旨がかかれた手紙を扁額にしたものです。

実は、日蓮宗は一時期布教を禁じられた時期がありました。
布教を禁じられる、ということは、衰退の道を歩むということですよね><

そのきっかけとなったのが、天正7 (1579) 年の織田信長の命で安土浄厳院にて行われた、浄土宗と日蓮宗(法華宗)の間の法論安土宗論です。
両宗派の高僧たちが法話バトルを繰り広げ、頂妙寺からも代表の僧が出ていました。
しかし結果は敗北。
それで布教の道を閉ざされ、衰退していました。

それが秀吉の時代になって法話バトルの内容が検証され、布教が許されることになったのです。
安土宗論で日蓮宗が負けたのは信長の策謀だったとも言われているんですね。
それだけかつては勢いがあったのかもしれません。

そして、布教ができる喜びを京都中に知らせるため、その時の許状を扁額にしたものが仁王門に掲げられている、というわけです。

元の許状は、今回の特別公開で本堂裏の書院にて拝観することができます。

頂妙寺の書院で寺宝を拝観

頂妙寺 本堂

仁王門をくぐり、本堂の裏に回るとそこに書院があって、拝観の入口になっています。
特別公開の看板が立っていますが、そこに書かれているのは、俵屋宗達筆の牛図(重文)。
今回のメインです。

牛図は二幅あって、看板に書かれているように牛が立っているものと、もう1つは牛が座っているものがあります。

俵屋宗達 牛図
※画像 非公開文化財特別公開のガイドブックより)

よく見ると牛の筋肉の表現がすごいです。
下地が乾かないうちに次の色を落とす「墨のたらしこみ」という技法を使って、躍動感溢れる筋肉を表現しているのだそうです。
偶然のにじみを利用した技法ですが、宗達は他の作品にもこの技法を使っていますよね^^

絵の上の方には、歌人でもあった公卿、烏丸光広による賛が記されています。
つなぎを解かれた牛によって、何物にも縛られない生き物の自由を讃えているのだとか。

残念ながら、期間の前半・後半に分けて交代で一幅ずつ公開されるので、二幅同時に見ることはできません。
二幅とも見たい場合は、前半、後半で2回訪れる必要があります。

牛図の他には、「蓮紙織画」、「三十番神像」、「頂妙寺版法華経版木」、「京都十六本山会合文書箱」が展示されていました。

中でも興味深かったのは、「蓮紙織画」ですね。

頂妙寺 蓮紙織画
※画像 非公開文化財特別公開のガイドブックより)

「織画」と書かれているように、縦横で織られて蓮の絵になっています。

絵を縦に一定の幅で裁断したものを縦に、縦に使うものと同じ幅で裁断した白紙を横にしています。
これらを縦横に織ることで、モザイク状になっているんですね。
写真で見るとそれがわからないのですが、拝観して間近で見るとよくわかります。

そのモザイク状の感じが、現代の感覚で見てもアーティスティック♪

そして、伊藤若冲の升目描きの着想のもとになったとも考えられているのだそうです。

俵屋宗達のお墓

頂妙寺の山門をくぐって右側に、お墓があります。
最初は檀家さんのお墓だと思って気にも留めなかったのですが、お寺の方の話によると、そこに俵屋宗達のお墓と思われるものがあるとのこと。
それがこちら。

伝・俵屋宗達の墓

あくまで伝・俵屋宗達の墓とのこと。
墓石に「俵屋宗達」などの文字がないのでよくわからないのですが、お墓の下に看板がかけられていました^^;

俵屋宗達は生まれた年、亡くなった年もわからないほど不明なことが多いんですよね。

頂妙寺の御朱印

頂妙寺で頂いた御朱印です。

頂妙寺 御朱印

頂いたのは、あらかじめ書かれているものでした。

「南無妙法蓮華経」と書かれているのですが、この筆端を跳ねるように書かれた独特の字体、日蓮宗のお寺ではよく見かける字体ですね。
これは、「髭題目」とか「跳ね題目」と呼ばれるものです。

上で紹介した伝・俵屋宗達の墓も髭題目が刻まれていますね。

「法」以外の六文字の筆端を伸ばしているのですが、これは日蓮がそのようにして書いていたものを受け継いでいるのだそうです。
これは、「法」が智慧の象徴で、そこから光明を放つ様子を表しているのだとか。

日蓮宗の寺院に行くと見れると思いますので、見つけたら思い出してみて下さい^^


第49回 京の冬の旅 非公開文化財特別公開は、2015年1月10日~3月18日まで。
特別拝観料は600円です。

牛図は2月12日以降に展示替えを行うそうです。
たらしこみ技法をよく見るなら、前期展示の立っている牛図の方が良いと思いますので、早めに行かれることをお勧めします。