山本山

冷水寺のある宇根集落を西に向かうと、小高い山本山があります。
その麓には、西阿閉(にしあつじ)という集落があり、集落の中心には竹蓮寺というお寺があります。

竹蓮寺

奥にあるお堂は観音堂。

竹蓮寺 観音堂

観音堂なので観音様が祀られていることが想像できますよね。
ここで祀られているのは伝・聖観音です。

竹蓮寺 宝冠阿弥陀如来

竹蓮寺 宝冠阿弥陀如来

平安時代後期の作とされ、ケヤキの一木造りで高さ83.5cm。
穏やかな表情をされていて、優しさを感じますね^^

しかしこの写真を見て、
「あれ?おかしい・・・」
と思った方もいらっしゃるかもしれません^^;

手を見ると、蓮華を持つような手の形、そして結跏趺坐という座り方は聖観音の像容です。

竹蓮寺 宝冠阿弥陀如来

しかし頭上には如来にしか見られないパンチパーマな髪形、螺髪(らほつ)が見られます。

竹蓮寺 宝冠阿弥陀如来 螺髪

さらに、聖観音は菩薩なので、天衣(てんね)という衣装を着ており、ネックレスのような装飾品を身につけます。
菩薩は釈迦の王子時代の姿がモデルですから、きらびやかなんですね。

しかしこの仏像は、衲衣(のうえ)というシンプルな衣装。
これは悟りを開いた後の釈迦がモデルですから、煩悩に左右されないシンプルなお姿なのです。

つまり、この像は如来と観音の特徴が混ざっている像容なのですが、集落では「聖観音」として信仰されているのですが、仏像としては「宝冠阿弥陀如来」とされています。

宝冠阿弥陀如来というのは、比叡山発祥の常行三昧堂の本尊の形。
宝冠をかぶっていることからその名前がついています。
全国的にも作例が少なく、珍しい仏様なんです。

地元の伝えによると、大雨の際に余呉川の橋桁に流れ着いた像を住民が拾い上げたのだそうです。
そして、お堂を作って拝んできたといいます。

寺伝が少ないので詳細はわかっていないのですが、現在の聖観音の像容は、膝から前、両手共に後世の修理によるものということがわかっています。

両手は聖観音の手が取り付けられていますが、当初は膝の上で阿弥陀定印を結んでいたと考えられています。

余呉川から流れてきたということは、元々この地域の仏像ではなかったのだと思いますが、湖北の地域では幾多の戦乱があって、村人は仏像を土に埋めたり、川に隠したりして守ろうとしたといいます。

そのため、所有がわからない仏像を安置しているお堂もたくさんあるんですよね。

あくまで憶測ですが、竹蓮寺の仏像も、流れ着いた仏像に失われた部分に観音の容姿を補って、村で祀るようになったものなのかもしれませんね^^

御朱印

竹蓮寺の御朱印です。

竹蓮寺 御朱印