壺坂寺

壺坂寺は、南に吉野山を控え、北に大和三山や奈良盆地を一望できる壺阪山の中腹に建っている真言宗のお寺です。

寺所蔵の「南法華寺古老伝」によると、大宝3年(703)年、元興寺の僧、弁基上人がこの山で修行中、愛用の水晶の壺を坂の上の庵に納め、感得した観音像を刻んで祀ったのが始まりなのだそうです。
そのような縁起もあって壺坂寺と呼ばれることの方が多くなっていますが、お寺の正式名称は南法華寺。
京都の清水寺が北法華寺と呼ばれるのに対して、こちらが南法華寺となっています。

壺坂寺は西国三十三所観音霊場の第六番札所に指定される名刹でもあり、御本尊十一面千手観世音菩薩は眼病に霊験あらたかな観音様として信仰されています。

その霊験あらたかぶりには、あの清少納言も「枕草子」の中で霊験のお寺の1つとして挙げているほどです。
また明治の頃には、盲目の夫「沢市」と夫の開眼を祈る妻「お里」の夫婦愛の物語を描いた人形浄瑠璃『壺坂霊験記』という演目が初演されて共感を呼びました。
それから文楽や歌舞伎でもたびたび上演されるようになっています。

壺坂寺はどんなお寺?

壺坂寺

壺坂寺は、山の緑と伽藍がマッチした境内になっています。
多宝塔や三重塔などがあり、綺麗です。

壺坂寺 多宝塔 三重塔

一方で独特の雰囲気を持ったユニークなものがたくさんあります。

天竺(インド)から招来したという大きな石仏があったり、オブジェが置かれていたり、天竺(インド)から招来した新しい石仏がたくさんあったり、仏伝図のレリーフがあったり、スタンプラリーがあったり、なんだか色々あり過ぎて、一見すると方向性が良くわからないという印象を受けてしまいます^^;

でも、よくよくお寺の事を知ると、壺坂寺は海外への奉仕活動を通して国際交流をしているんですね。
特に昭和40年からはインドでハンセン病患者救済活動に参加していて、インドとは深い交流があるようです。

壺坂寺に安置されている石仏は、インド政府から贈られたものばかり!
見かけ倒しではなく、本場の物が並んでいるということです。

ということで、壺坂寺は、

  • 眼病に霊験あらたかなお寺
  • 国際交流(特にインド)のお寺

という側面が中心になると思ってよいでしょう。
それを頭に入れて境内を回るとなかなか面白いお寺だということがわかります^^

まずは眼病関係のものを紹介すると、まずは入口付近にある石碑や子供が座っているようなオブジェ。

壺坂寺 盲老人ホーム

こちらは、目が不自由な老人専用の「養護盲老人ホーム」が建てられた記念オブジェです。
「盲老人ホーム」というのは聞き慣れませんが、壺坂寺は盲老人ホーム発祥の地なんです。
さすが眼に霊験のあるお寺ですね^^

本尊を礼拝するためのお堂「禮堂」の前には、メガネのオブジェがあります。

壺坂寺 メガネ

日頃使っているメガネやコンタクトレンズに感謝し、合掌しながらくぐります。

壺坂寺 メガネ

そうすることで視力があがると言われています^^

また、壺坂寺では毎年10月18日に「めがね供養会」という法要がこのオブジェの前で行われます。
使わなくなったメガネなどもこの時に持ってくると供養してくれるようです。

こちらはめがね供養観音。

壺坂寺 めがね供養観音

全長3mもある大きな石像です。
古いめがねやコンタクトレンズは、この台座に奉納供養されるそうです。

本堂横手には、『壺坂霊験記』に出てくるお里・澤市の像があります。

お里・澤市

壺坂霊験記の概要はこちら⇒壺坂寺公式サイト | 壺坂霊験記

本堂の横手は「投身の谷」というのですが、この場所はお里・澤市がそれぞれを想って身を投げた場所。
結局は観音様の霊験でその命は助かり、沢市の目も開眼した、という内容になっています。
境内には沢市の霊魂碑やお里観音を祀る小さなお堂もありました。

続いてはインドと関わりのあるオブジェや石像です。

まず最初に出会う大石仏がこちら。

天竺渡来 大釈迦如来石像

身丈10m、台座5mの天竺渡来 大釈迦如来石像を中心とする大石仏群です。
御前立は

  • 十一面千手観音菩薩像 身丈3.3m 台座1.5m
  • 文殊菩薩石像 身丈3m 台座2m
  • 普賢菩薩石像 身丈3m 台座2m

と、1尊だけでも十分な大きさ。
上の写真では大きさがわかりにくいですが、違う角度で見ると、その大きさがわかります。

天竺渡来 大釈迦如来石像

天竺渡来 大釈迦如来石像

中心の釈迦如来は「壺坂大佛」とも呼ばれています。

平成19年11月開眼した石仏ですが、世界中で起こった暴力や中傷などによって痛んだ心を癒やすため建てられたのだそうです。
「天竺渡来」と書いている通り、インドでの奉仕活動のご縁で制作されたものです。

そしてこちらは、平成23年に開眼した、身丈5mの夫婦観音。

壺坂寺 夫婦観音

こちらもインドより請来した観音で、沢市開眼350周年と擁護老人ホーム建立50周年を記念したもの。
この観音様に祈るための台座は、パワーストーンで出来ています。

壺坂寺 夫婦観音 台座

緑はマラカイトで、視力改善・厄除けに、青はラピスラズリで健康増進・頭脳明晰のご利益があるそうです。

三重塔の前には、釈迦一代記のレリーフがあります。

天竺渡来佛伝図レリーフ

こちらもインドから輸送したのだそうです。
よく見ると釈迦のエピソードの有名な場面ばかりになっています。
一部を紹介すると、まずは釈迦が苦行する様子。

釈迦 苦行

断食の修行で骨と皮だけになるほど厳しいものでしたが、このやり方では智慧が生じなかったことから、苦行は意味がないということを知ります。

こちらは降魔成道。

降魔成道

釈迦が瞑想している際、悟りを開くのを邪魔するために悪魔たちが誘惑をします。
しかし釈迦は降魔印をとって悪魔たちを退けています。

そしてこちらは入滅のシーン。

入滅

全部は載せられませんが、他にもたくさんあります。
シーンがわかるとなかなか面白いです^^

レリーフの近くには、天竺門という門があります。

壺坂寺 天竺門

この先に行くと、道路を挟んで向こう側に行くことができるのですが、そこには天竺渡来の大観音、そして釈迦如来大涅槃石像があります。

大観音 涅槃像

とにかくどちらもでかいです^^;

釈迦如来大涅槃像は全長8m。

涅槃像

釈迦が入滅(亡くなること)する時の様子ですが、日本では涅槃像は少ないですよね。
この像は、釈迦の最後の教え「自灯明(じとうみょう)法灯明(ほうとうみょう)」を表しています。

これは、自らを灯明とし、自らをよりどころとすること、つまり、釈迦がいる・いないにかかわらず自分を頼りとし、正しい教えを頼りとすることを意味しています。

そして後ろの大観音はもっとでかい!
建物と比較するとよくわかります。

涅槃像

全長20mもあるそうです。

壺坂寺 大観音

ちなみに奈良の大仏の大きさは像高で14.98m、台座は3.05mですから、合わせても18m。
壺坂寺の大観音の方が大きいのです。

重量も全然違います。
奈良の大仏は約250tであるのに対して、壺坂大観音は1,200t。
5倍近いですね^^;

こちらもインドから運ばれてきたのですが、66個に分割して彫刻、運ばれてきて、組み立てたのだそうです。
よく見ると、繋ぎ目が見えますね。

壺坂寺 大観音

大観音と大涅槃像のある場所は広場になっていて、壺坂山から見下ろす景色が見えます。

壺阪山 景色

写真では白飛びしてしまっていますが、遠くは二上山まで見えますよ^^
大観音様はさらに20m上ですから、もっと遠くまで見えるんでしょうね♪

壺坂寺は山の中なので、自然が豊かです。
春は山吹や桜、夏はラベンダー、秋は紅葉と、四季折々楽しめます。
山の景色もきれいでしょうね^^

期間限定 本尊に触れることができる本尊お身拭い

壺坂寺のご本尊、十一面観音菩薩は、眼病にあらたかな観音様。
御本尊も独特なお姿をされていて、大きく見開かせた目が口はエキゾチックな雰囲気を漂わせる観音様です。
境内にある石仏と同様に、インドとの交流で招来したのかと思いきや、現在の本尊は室町時代の作なのだとか。

御本尊は常時公開されていて、間近で参拝できる仏様ですが、更に2014年10月11日~11月30日の間は「お身拭い参拝」という特別な参拝をすることができます。

壺坂寺 お身拭い

お身拭いは、ご本尊に触れることで参拝者は特別な縁を得ることができます。
今回は2009年10月に行われて以来2度目なのだとか。

私は実は、この参拝が目的で今回訪れたんです^^

特別拝観料は500円で、入口の受付で入山料と一緒に支払います。
(入山料とセットで購入すると、100円割引の千円で入山できます。)
すると、パンフレットの他に、散華や延命十句観音経の写経用紙、そして宝印が押された白い浄布を頂きました。

お身拭い 浄布

参拝にはこの浄布を使います。
まずは本堂に行って、本堂奥にある受付に行きます。
そうすると、塗香(ずこう)というお香で手を清めた後、笈摺(おいずる)という白衣を貸してもらえます。

それを着て本尊のところに行き、最初に頂いた浄布で本尊の膝などを拭きながら祈願します。

御本尊は高さ3メートルもあるので、間近で見るとかなり大きいです。
しかも触れることができるなんて、滅多にない機会でした^^

使った浄布はお守りとして持ち帰れます。
目に当てても良いですし、通帳などを包んでも良いそうです。

眼病封じの特別なお守り

壺坂観音は眼病封じに霊験あらたかな観音様ですから、眼病封じ祈願お守りという特別なお守りがあります。
訪れた日は私の義母が白内障の手術をする前日だったので、その祈願お守りを頂くことにしたんです。

本堂前に行くと、こういう木札が置かれています。

眼病封じ祈願

この木札は真ん中で割れるようになっている木札で、左側が頂くお守り、右側がご本尊に預ける木札です。
木札自体の種類は3種類。

  • 大判札:1,000円
  • 厄除け札:800円
  • 普通札:500円

写真の後ろにある赤い札は「厄除け札」で、厄年の人用なのだそうです。

まずは申込書にお守りを頂く本人の名前を書き、本堂外の受付で渡します。
すると受付の方が納め札にその名前を書いてくれるので、それを再び受け取って、ご本尊を参拝します。

祈願したら木札を二つに割り、納め札の方を納めます。

参拝後もう一度受付に行くと、眼病封じの御朱印を頂くことができます。

壺坂寺 眼病封じ 御朱印

頂いた木札と御朱印、そしてもう一度お参りができる無料券が付いています。
手術などをするのでしたら、後日お礼参りに来ることができますね^^

壺坂寺の御朱印

壺坂寺は西国三十三所観音霊場の第六番札所に指定されています。
まずは西国三十三所の御朱印です。

壺坂寺 西国三十三所 御朱印

そして壺坂寺の御詠歌です。

壺坂寺 西国三十三所 御詠歌

岩をたて 水をたたえて壺坂の庭の砂(いさご)も 浄土なるらん

と書かれています。

次は、先ほど紹介した、眼病封じの祈願をした人だけが頂ける御朱印です。

壺坂寺 眼病封じ 御朱印

一部ぼかしているところがありますが、そこには祈願者の名前が入ります。
納経所で用意されているもので、普通の御朱印と比べて一周り大きいので、御朱印帳に貼るのは難しいです。
なので、お札のように扱うことになるでしょうね。


壺坂寺は山の中腹にあるので、行くには車で行くのがオススメですが、近鉄「壺阪山」駅から壷阪寺前までバスも出ています。
ただし、本数がものすごく少ないようです^^;
バスで行かれる方は事前に時間を調べておいた方が良いと思います。
奈良交通バス | バス停:壷阪山駅の時刻表

タイミングが合わないなら、タクシーを利用した方が良いかもしれませんね^^;

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