放下鉾

前回の記事で菊水鉾に登ったことを書きましたが、今回は放下鉾について。
こちらも登ってみました。

放下鉾(ほうかほこ)」の名前は、兄弟が父の敵の仇討ちを果たす謡曲に由来します。

「放下」は禅語で「放下(ほうげ)」と読みます。
これは、妄念を捨て技芸練磨に専心することをいいます。

また、そのように技芸を磨き、街角で曲芸をしながら仏法を説いた僧のことを放下僧(ほうかそう)といいます。

兄弟はその、放下僧に身を変えて父の敵を探し続け、仇討ちを果たしたのです。

鉾に高くそびえる真木の半ば、天王台には「放下僧」が祀られているそうです。
ただ、この像は基本的に人に見せるものとしていないですし、高いところにあるのでなかなか見えず、どこにあるのかよくわかりません^^;

放下鉾の町会所は懸装品がたくさん♪

放下鉾

菊水鉾に登る時は粽の購入(1,000円)が必要でしたが、放下鉾は2016年現在、ほぼ無料(お賽銭程度)で登ることができました。
今後は変わるかもしれませんが、これはオトクですね^^

ただし、放下鉾は長刀鉾とともに女人禁制という伝統を頑なに守っています。
女性は残念ながら町会所の2階までしかいけないんですね。

しかし、がっかりすることはありません。

2階には使われている懸装品が展示されていて、かなりの間近で見ることができます。
触っちゃいけませんが、触れる距離なんです^^

まずは放下鉾といえばこの見送。

放下鉾 バグダッド

昭和57年に制作された皆川泰蔵作の「バグダッド」。
イスラムな世界観を祭に取り込むのも珍しいですが、祇園祭の懸装品ではこういうエキゾチックなものも平気で取り入れてしまうんですよね^^
なかなかインパクトのある見送です。

お隣には前回まで使われていた見送「鳳凰額百子嬉遊図」。

鳳凰額百子嬉遊図

子どもたちが楽しそうに遊んでいる姿がかわいらしい作品ですね^^

稚児の馬具や旗。

放下鉾 馬具

金色に輝く天水引は西陣織。

放下鉾 天水引

祭ではこの複製が使われているそうで、本物は傷まないようにバックアップ、ってところですかね^^
なので、本物は二階に登らないと見られないのです。

そして、操り稚児人形の三光丸。

放下鉾 三光丸

山鉾巡行ではこの三光丸が正面に乗ります。

現在、生き稚児(本物の子供)が乗っているのは、巡行で先頭を行く長刀鉾だけなのですが、かつては放下鉾にも生き稚児が乗っていたそうです。
そんな放下鉾も昭和4年以降は稚児人形になりました。

それでも長刀鉾以外では唯一、稚児舞いが見られる鉾なんです。

三光丸は操り稚児人形となっていて、3人の人形方が操ります。
山鉾巡行を観覧される方は、放下鉾の稚児人形にも注目してみてください^^

また、町会所の二階奥にある土蔵も見どころの一つです。

放下鉾 土蔵

会所と土蔵が長い橋で繋がっていているのが見えますが、これは鉾を保存するために町屋を機能的にした町会所建築の典型例の一つとなっています。

放下鉾 町会所建築

技芸上達の鉾、放下鉾に登ってみました

放火鉾は街角で曲芸をしながら説法をしていた放下僧が由来となっていることから、曲芸=芸能にご利益がある鉾です。
三光丸が操り人形であるのもそのためかもしれません。

そんな鉾の二階に上がれば技芸上達間違いなし?
ってことで、上がってみました^^

二階から鉾に繋がる階段があるのですが、結構急な階段になっています。

放下鉾 階段

菊水鉾では祇園囃子を堪能したのですが、こちらでは囃子方の人は乗っていなかったので、鉾内の空間とそこから見える景色がどんなものか?見ることにしました。

二階にはベンチのようなものが備え付けられており、中央にも座れるスペースがあります。

放下鉾 二階

天井飾りはこのような感じ。

放下鉾 天井

鉾の正面からの景色は、宵山の夜を彩る駒形提灯で見えませんが、下を見るとかなり高いです。

放下鉾 景色

放下鉾 景色

囃子方は欄縁に乗り出して座りますが、これはちょっと怖いですね^^;
ましてや巡行の時は鉾が動きますし、辻回しに至っては回転方向に動きますから、想像すると何かに捕まりたくなります><

そして、登るときよりも、降りるときの階段は怖いです^^;

放下鉾 階段

隙間が見えるのですが、鉾に階段がかけられていないように見えますので、一歩目を踏み出しても大丈夫なのか、躊躇してしまいますね^^;

町会所の一階でヒオウギを頂きました。

放下鉾 天井飾り

町会所の一階には、天井飾りが展示されていました。
その横には植物が生けられていて、説明書きが置かれています。

放下鉾 ヒオウギ

これは、扇状の葉を持つことから名づけられたヒオウギ(檜扇)という植物で、京都では祇園祭にヒオウギを生ける風習があるのだとか。

ヒオウギは古代、悪霊を退散したという言い伝えから、厄除けの花として飾られていたのだそうです。

そして祇園祭も疫病の流行を抑える祇園御霊会に始まる祭りです。
厄除け繋がりで京都で生けられるようになったのでしょうね。

言われてみれば、他の山鉾の町会所でも飾られているんですよね。
今まで撮ってきた写真を振り返ってみると、例えばカマキリの山、蟷螂山(とうろうやま)ではヒオウギが黄色い花を咲かせていました。

蟷螂山 ヒオウギ

そして主に宵山の日に行われている屏風祭で屏風を披露している個人宅でもヒオウギが飾られていました。

屏風祭 ヒオウギ

そして私が写真を撮ったり、説明を読んだりしていると、町内の方がいらして、

「おたく、これに興味ありますのか?よかったら貰っていきはりますか?」

と声をかけてくれました。
一瞬何のことかわからなかったので戸惑いましたが、頂くことになり、町会所の奥の方に取りに行ってくれました。
そして頂いたのがこちら。

放下鉾 ヒオウギ

持ち帰り用にちゃんとパッケージされたヒオウギ。

「え?こんな立派なもの、頂いてよろしいんですか?」

と、思わず聞き返したのですが、

「はい。また放下鉾のことを思い出して下さい。」

という言葉を頂き、ありがたく頂戴しました^^
今玄関の前に飾っています。

ヒオウギは8月ごろになると黄色や橙色の花を咲かせ、放射状に開くそうです。
そして午前中に咲いて、夕方にはしぼんでしまうのだとか。

花の後には黒いタネをつけるのですが、そのタネは「射干玉(ぬばたま)」と呼ばれ、和歌で「夜」や「黒」、「暗き」などにかかる枕詞「ぬばたまの」は、このタネの色からきているとも言われています。

なかなか良い勉強になりました♪