東寺

京都では毎年春・秋に非公開文化財の特別公開が行われます。
期間は10日ほどと短く、とても全ては回れないのですが、毎回違う文化財が登場するのでどれに行こうか迷ってしまいます。
今秋は全18ヵ所あるうち、東寺の潅頂院に行ってみました!

東寺は真言密教の根本道場なのですが、そこにある潅頂院は真言宗の中でも一番重要な密教の儀式が行われる場所で、僧侶が出入りすることはおろか、滅多に一般公開することはありません。

ただ、年に一度だけ唯一、潅頂院の敷地内までは入ることができる日があります。
それは弘法大師の命日である4月21日。
その日に行ったことがあるのですが、それでもさすがにお堂の中までは入ることはできません。

以前の記事⇒1年に1度のみ公開!東寺・灌頂院の絵馬を見に行きました。

でも今回はこの期間だけお堂の中にも入ることができ、実際に儀式で使う両界曼荼羅・元禄本(重文)も拝観することができます。
曼荼羅だけなら9年前に宝物館で公開したことはあるそうですが、儀式を行う場である潅頂院で公開するのは初めて。

曼荼羅にも色々ありますが、日本における曼荼羅の代表格と言えば、空海が唐から持ってきた両界曼荼羅ですね。
それが見れることもすごいのですが、儀式の雰囲気も味わえるという、かなり貴重な機会です♪

さらに東寺で行われているのはそれだけではありません。
宝物館では儀式で使われている「十二天像」が公開されています。

どちらもなかなか見れないものですし、テーマが一致していますので、合わせて見ておきたかったんです^^

滅多に入ることのできない荘厳な空間、潅頂院

京都非公開文化財 特別公開

東寺の境内の南西の端にある潅頂院。
普段は人が入れないように硬く門が閉ざされています。

東寺 潅頂院

東寺は観光客が常にいるのですが、ここは人通りも少なく、いても通りすがりの人ばかり。
潅頂院の方へ向かう人はいません。
なんともさみしい感じがするんですよね^^;

それが今回の期間はこのようになっています。

東寺 潅頂院

扉が開いて、人が集まっていますね^^

潅頂院は国の重要文化財なので、その中に入るというのはちょっと緊張します。
柱にもたれかかったりするのもダメですし、杖を突くのもダメ(必要な方は係員が案内)なんです。

堂内撮影禁止なので写真では紹介できませんが、産経新聞さんが今回の公開の様子をYouTubeにアップしていました。

動画の通り、堂内は真っ暗で足元が見えません。
かなり儀式っぽい雰囲気です。
その中で大きな曼荼羅がLEDで照らされていて、よく見えるようになっています。

「両界曼荼羅」は、「金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)」と「胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)」の二つ合わせた呼び方で、その二幅が東西に向かい合うように掛けられています。

それぞれ縦4.1メートル、横3.8メートルという、かなりの大きさ。
今回展示されているのは「元禄本」といって、1693年の4度目の模写によるものです。
そのためか色彩もよく残っていました。

動画には映っていませんでしたが、曼荼羅の後ろの板壁には、東西でそれぞれ四人ずつ、真言八祖が描かれていました。
ここまで見せられると、実際の儀式も見てみたくなってしまいますね^^

そもそも潅頂院ではどのような儀式が行われるのか?というのは先ほども紹介した過去記事に書きました。

1年に1度のみ公開!東寺・灌頂院の絵馬を見に行きました。

両界曼荼羅はそのうち後七日御修法(ごしちにちみしほ)で使われます。
毎年正月8日~14日に国家安泰などを祈る真言宗最大の密教行事です。

これは空海の時代から行われていて、長らく正式な宮中行事とされていたのですが、明治4年の廃仏毀釈の影響で一時廃止され、明治16年から東寺の潅頂院で再び行われるようになったのです。

現在潅頂院で行う後七日御修法は真言宗全体から選ばれた高僧が集まって行います。
そして、息災を願う息災護摩壇、増益を願う増益護摩壇の他、聖天壇、十二天壇などを設けて、高僧たちが役割分担をしてそれぞれの修法を同時に行うのです。

一人の高僧が一つの修法を行うだけでもすごいのですが、それを同時に行ってしまうのですから、密教オールスター祭典と言った感じですね^^

さすがにそれは秘儀なので見れることはないと思いますが、見てみたいものです^^

国宝 十二天像など潅頂儀式の世界に触れられる特別展

東寺 宝物館

続いて東寺の宝物館では、京都非公開文化財特別公開とは別の東寺独自の企画で「東寺の十二天像-潅頂儀式の世界-」という特別展を行っていました。
東寺は寺宝をたくさん所蔵していて、毎年春・秋にテーマを変えて宝物館で展示しているんです。
今回は潅頂院と両界曼荼羅の公開がありましたので、それに合わせての展示だったんでしょうね。

下はリーフレットの表紙。

東寺の十二天像 潅頂儀式の世界

目玉はやはり国宝の「十二天屏風」です。

十二天というのは、仏法を守る護法善神で、8方の方角を守る八尊、上下を守る二尊、日月の神である二尊を合わせた十二の神です。
方位の守護尊というと四天王が有名ですが、密教では十二天が四天王のかわりになります。

十二天は以下のようになっています。

  • 毘沙門天(びしゃもんてん):北
  • 伊舎那天(いしゃなてん):東北
  • 帝釈天(たいしゃくてん):東
  • 火天(かてん):東南
  • 焔摩天(えんまてん):南
  • 羅刹天(らせつてん):西南
  • 水天(すいてん):西
  • 風天(ふうてん):西北
  • 梵天(ぼんてん):上(天)
  • 地天(ちてん):下(地)
  • 日天(にってん):日
  • 月天(がってん):月

そして十二天屏風がこちら。
2つに分かれています。

左から水天・羅刹天・焔摩天・火天・帝釈天・伊舎那天。

東寺 十二天屏風
※画像 宝物館で販売されていたポストカードより

左から月天・日天・地天・梵天・毘沙門天・風天。

東寺 十二天屏風
※画像 宝物館で販売されていたポストカードより

特別展は前期・後期に分かれていて、上の二枚が別々で展示されていたのですが、私が訪れたのは後期で、下のポストカードのものです。
私は中でも月天が気に入りました^^

東寺 月天
※画像 宝物館で販売されていたポストカードより

鎌倉時代の絵仏師、詫間勝賀(たくましょうが)という人が描いたそうです。
静止しているようで動きもある感じがいいですね^^
そして手に持っているのは月とうさぎ。

月の模様がうさぎがお餅をついているように見えると言われますが、既に鎌倉時代の人もそのように感じていたのでしょうね^^

今回の展覧会でもう1つ私が生で見て感動したのはもう1つ、敷曼荼羅図(しきまんだらず)です。

「曼荼羅」といえば、壁にかけているものをよく見かけると思いますが、敷曼荼羅は床に敷く曼荼羅。
仏と縁を結ぶ結縁潅頂を行う際に使う曼荼羅で、これによって自分の守り本尊を決めてもらえます。

写真がないので説明しづらいのですが、やり方はまず、壇の上に敷曼荼羅を敷き、受者に目隠しをして敷曼荼羅のそばに連れてきます。
そして華を手に取り、敷曼荼羅の上に落とします。

その、落ちた位置が重要で、華が落ちたところにいる仏が守り本尊になります。
これを投華得仏(とうげとくぶつ)と言います。

この投華得仏ですが、私は下のDVDで知りました^^

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万物の『生』と『死』を鋭く見つめ、人間の原点に深く迫りながら懸命に生きた巨人・空海。弘法大師御入定1150年御遠忌記念映画。

空海の一生を描いた映画ですが、空海が、師匠である恵果阿闍梨から投華得仏を受けて、大日如来を守り本尊とする様子が描かれていたんです。
その本物の儀式で使うものがここで見れたのが感慨深いですね^^


京都非公開文化財特別公開は期間が2週間と短く、もう終わってしまいましたが、宝物館の特別展は12月25日まで行われています。
その他にも東寺では、五重塔初層部の公開や、五大虚空蔵菩薩のいる観智院の特別拝観も同時に行われています。
一同に見れるお得な機会となっていますよ^^