大寧軒

京都市左京区にある臨済宗南禅寺派大本山、南禅寺。
室町時代に京都五山、鎌倉五山と、禅寺が優遇された時代がありましたが、その両五山の上におかれて別格扱いされたのが南禅寺です。

南禅寺境内の境内には今でも塔頭寺院がたくさんあるのですが、その中の一つに大寧軒(だいねいけん)があります。

元々は「大寧院」という塔頭寺院だったのですが、明治の廃仏毀釈で廃寺となってしまいました。

それからこのあたりは民間に払い下げられて別荘地帯となり、大寧院跡も持ち主を転々とし、最終的に茶道の家元・薮内家のものとなります。
その時に作られたのが大寧軒です。
(※大寧軒は長らく薮内家の所有でしたが、2004年、百数十年ぶりに南禅寺の所有となっています。)

庭の設計は薮内家の第十一代当主 透月斎竹窓紹智によるもので、琵琶湖疏水を引き込んだ池泉回遊式庭園となっています。
茶道の家元が関わっていることもあって、キレイな庭なんです^^

境内の広さは470坪。
庭園内には茶室「環翠庵」があります。
燈籠も春日型・雪見型・織部型など様々な形の燈籠があり、自然石を利用した手水鉢など珍しい石造物が点在しています。

そして清流の中には三柱鳥居(みはしらとりい)という珍しい鳥居が立っています。

この風景に趣きがあったので、以前から行ってみたかったのですが、大寧軒は普段は非公開。
それが「第40回 京の夏の旅」で公開されていますので、それに合わせて行ってきました。

薮内家が趣向を凝らした露地風庭園

入り口から入ってすぐ、そこにはもう庭園らしく整えられた空間があります。

大寧軒 入り口

曲線を美しく描く小川が流れていて、横にかわいらしい燈籠。

大寧軒 入り口

入り口からハイレベルの美しさです!

この奥で拝観の受付を済ませ、もう一つの入り口に入ります。
いかにも趣きがありそうな雰囲気です。

大寧軒 入り口

ちょっと入ってみただけで、目を見張るほどきれいな空間です^^

大寧軒 入り口

大寧軒 入り口

庭も全体的に苔でびっしり覆われているので、踏まないように気をつけながら飛び石を渡らなければいけません。

中を流れる小川は全て琵琶湖疏水から引き込んだもの。
水が透明できれいなんです。

大寧軒 小川

水草も生えています。

大寧軒 小川

よく見るとしじみがいるのですが、これは琵琶湖から流れてきて自然繁殖したものなのだそうです。

大寧軒 しじみ

それだけ水質が良いということですね^^

中央には池があって、その真ん中にはスイレンが生えています。

大寧軒 スイレン

私は12時頃に訪れたのですが、午前中ならキレイに咲いていたそうです。
咲いている景色、見たかったですね~^^;

池の畔に立つ雪見型灯篭。

大寧軒 雪見灯篭

普通の雪見灯篭は四足で背が低いのですが、こちらは水中から細長く立っています。
別角度からの写真を見るとわかります。

大寧軒 雪見灯篭

手前の松の葉の上に雪が積もるとキレイになりそうですね^^

主屋の前にある井戸。

大寧軒 井戸

帽子をかぶったようなかわいい利久型燈籠。

大寧軒 利久型燈籠

小川だけでなく、玉石を使った枯山水の川もあります。

大寧軒 枯山水

自然石を利用した手水鉢。

大寧軒 手水鉢

兵庫県の城崎温泉のほとりにある玄武洞から持ってきたという石柱。

大寧軒 玄武洞 石柱

石を積み重ねたように見えますが、これは160万年前に噴火した時に出来た自然石です。
急速に冷えて横に亀裂が入っているんですね。
玄武洞ではこのような石がたくさんできたようですが、今は持ち出しが禁止されています。

枯山水の向こうは「待合」があります。

大寧軒 待合

茶道では、亭主は茶室で茶を出してもてなすのですが、招待客全員が揃うまで待機してもらう場所が待合です。
今回は「京の夏の旅」の係の人が待機していて、ここで大寧軒の説明をしてくれます。

待合の前には注目の「三柱鳥居」があります。

大寧軒 三柱鳥居

本当に三本の柱の鳥居です!
珍しいですね^^

大寧軒 三柱鳥居

大寧軒 三柱鳥居

見てもわからないのですが、鳥居の足元中央からも水が湧き出しているそうです。

この鳥居はモデルとなっているものがあって、そのベースとなった鳥居は「京都三珍鳥居」の一つになっている「木嶋坐天照御魂神社」(通称:蚕の社)の鳥居です。

蚕の社のものは3.4mと大きいので、こちらも見に行く価値があるのですが、ここはこの風景にしかないものがありますね^^

三柱鳥居の手前にはオシャレな織部燈籠が置かれています。

大寧軒 織部燈籠

大寧軒 織部燈籠

一番奥まで進むと、滝があります。

大寧軒 滝

この滝の水が庭園の小川や池に流れ込んでいるわけです。
もちろん元になる水は琵琶湖疏水。
取水口との落差を利用して、3メートルの滝を表現しています。

待合所まで来ると、この滝の水の音とセミの音しか聞こえません。
でも、水の音で涼しい感じがしました^^
この景色を見てぼ~っとしていたいですね。

お次は池の向こう側に渡ります。
そこにあるのは、「環翠庵」という茶室です。

大寧軒 環翠庵

内部は非公開と聞いていたのですが、この日は普通に開いていました!

茶室らしく、入り口が狭くて中が暗め、入る事は出来ませんが、入り口からじっくり中を覗くことができました。

大寧軒 環翠庵

別の角度から。

大寧軒 環翠庵

二畳台目(にじょうだいめ)」という間取りの茶室です。

手前の二畳の畳が客座、奥にある少し短い畳が台目畳と呼ばれるもので、この構成が「二畳台目」です。

お茶の世界は詳しくはわかりませんが、おそらくおもてなしの心を究極に繁栄した設計になっているのだと思います。
こういう場所で頂いてみたいですね^^

最後に環翠庵の前から池を見た景色。

大寧軒 池

どこを切り取っても美しい場所でした^^


今回は「京の夏の旅」なので、緑が美しい庭園でしたが、紅葉の木も植えられており、秋にはおそらくキレイになると思われます。
あと、冬の雪が積もった様子も見てみたいので、他の季節でも公開してもらいたいですね^^

「第40回 京の夏の旅」は2015年7月11日(土)~2015年9月30日(水)まで。

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